初めて探究学習に挑む生徒の苦悩
指導初日、ある生徒は探究学習に関心を持てず、授業にも消極的でした。担当の教員が促しても、ときおり反抗的な態度を見せ、その様子から進め方が分からず迷っていることが伺えました。指導を受け持った対象学年の生徒たちは探究学習を始める前に大学教授の講演を受けていましたが、いざ自分でテーマを決めて取り組む段階になると、何から手をつければよいのか分からず、戸惑っているようでした。
ラポールの構築がコミュニケーションの基本
指導の効果を高めるには、生徒との信頼関係が欠かせません。まず、私は生徒の話にじっくり耳を傾け、少しずつ距離を縮めることを意識しました。それは「教える」のではなく、「寄り添う」姿勢を大切にするということです。そのアプローチの一つとして、ラポールの構築が挙げられます。ラポールとは、話し手と聴き手の間に築かれる信頼関係を指し、フランス語で「橋を架ける」という意味を持ちます。この関係が生まれることで、生徒は安心して自分の考えを表現しやすくなり、主体的な学びへとつながります。
私はこれまで、コンセプトデザインや人材育成開発でのヒアリングを通じてラポールの重要性を実感し、それを実践してきました。その経験を活かし、生徒が自らの関心を見出せるよう、具体的な事例を交えながら対話を重ねました。この時、生徒が自分の言葉で話すことを大切にし、考えを整理しながら表現できるよう促しました。そして、生徒の発言や反応を丁寧に汲み取り、彼らが自分の考えを深められるような問いかけを意識し、対話の質を高めることを心がけました。
ラポールの構築が転機に
信頼関係を築きながら、生徒が興味を持つテーマを見つけやすくするため、具体的な事例を交えて方向性を整理しました。最初は少し不安そうな様子だった生徒も、対話を重ねるうちに表情に変化が見られ、安心感が広がっていきました。消極的だった態度が次第に前向きに変わり、探究学習に対して積極的な姿勢を見せ始めました。
そして、関心を持てるテーマを見つけたことで、学習へのアプローチが大きく変化しました。授業後には、教員から「生徒が主体的に探究学習に取り組む姿を見るのは初めてです。テーマが決まり、意欲がぐっと高まりました」と報告を受け、改めて成果を実感しました。
迷っていた原因
後日聞いたところ、探究学習を始める前に受講した大学教授の講義は理論的な説明に偏りすぎており、高校生が実際にどのように取り組めばよいのか、十分に理解できていなかったそうです。さらに、大学教授自身が探究学習に直接アプローチした経験がなく、学問的な理論や研究のプロセスを中心に話を進めたため、生徒にとっては具体的なイメージを持ちにくかったのかもしれません。その結果、講義の内容を自分ごととして捉えられず、実践の場面で手が止まってしまう生徒が多く見られました。
探究学習が生み出す変化:教職員にもプラスの波及
このように、コミュニケーションの工夫が生徒の自己理解や学習意欲に与える影響は非常に大きいことがわかります。特に、テーマ設定の段階で信頼関係を築くことが、生徒の学びへの姿勢の変化を引き起こす要因となります。
実際に、生徒が自身の興味を発見し、主体的に探究へ取り組むようになることで、学習への不安が軽減され、積極的に思考を深める様子が見られるようになりました。この変化について、担当教員からも「これまで見られなかった姿勢で探究に取り組んでいる」といった声が寄せられました。従来の指導方法では引き出せなかった主体性が、適切なアプローチによって引き出される瞬間を実感したと言えるでしょう。
今後も、学びの進め方をより一層柔軟に、そして生徒一人ひとりのニーズに合わせた方法でサポートし、さらに効果的な学びの環境を作り上げていきたいと考えています。
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