「気がつけば、もう7月が終わってしまう」「何を探究すればいいのか全く思いつかない」。そんな声が聞こえはじめるのが、夏休みの後半に差しかかるこの時期です。
焦りはあっても、テーマが浮かばず、机に向かっても何も書けないまま時間だけが過ぎていく。そんな状態に陥る人も少なくありません。
ただ、それは決して怠けているわけではありません。探究の第一歩である「問いを立てる」という行為が、そもそも簡単ではないのです。けれど、視点を少し変えるだけで、身近なところからでも、今から取り組めるテーマは見つかります。
夏休み後半だからこそ、探究を始める意味がある
お盆を過ぎた夏休みの後半には、予定がひと段落するタイミングがあります。課外活動や旅行、イベントなどが一巡し、生活に少し落ち着きが戻ってくる頃です。
その時期、身の回りの景色にも小さな変化が見えはじめます。たとえば、昼間の商店街では人通りが少なくなり、代わりに朝夕に賑わいが集中していたり、図書館の利用者の年齢層が変化していたり。日常のなかに生まれるささやかな違和感やズレは、探究の入り口として十分な価値を持っています。
テーマが浮かばないときは、3つの視点を手がかりにしてみる
探究のテーマを自由に選べるはずなのに、なかなか決められず作業が止まってしまうことは、多くの人に起こりうることです。何に取り組めばよいか分からず、白紙のまま時間だけが過ぎてしまうこともあるでしょう。
しかし、興味がないわけでも、考える力が足りないわけでもありません。テーマが見つからないのは、気づきを引き出す視点がまだ定まっていないだけのことです。
そこで今回は、問いのきっかけをつかみやすくするための3つの視点を紹介します。どれも、特別な知識や準備を必要としないものばかりです。身近な観察や体験を手がかりに、探究へと踏み出す糸口になります。
① 小さな「変化」に目を向ける
「変わったこと」に注目すると、そこに問いが生まれます。去年との違い、先週との違い、午前と午後の違い。比較ができると、原因や背景を考える余地が生まれ、調査の方向も見えてきます。
たとえば、昨年に比べて夏祭りの規模が縮小されているとしたら、それは予算の削減によるものか、運営に関わる人が減っているからかもしれません。あるいは、客層そのものが変化している可能性も考えられます。
こうした「なぜ?」という問いが立ち上がった瞬間が、探究のスタートです。
② 自分の経験を調査対象にする
テーマは社会や地域だけでなく、自分自身からも生まれます。自分の行動や感覚を記録し、そこに何があるのかを丁寧に読み解いていく手法です。
たとえば、「作業に集中できる場所」について考えてみましょう。自宅、図書館、カフェなど、場所によって集中のしやすさが違うと感じたら、それぞれの環境要素(気温、照明、音)を記録してみます。すると、自分にとって最も作業が進む条件が少しずつ見えてきます。
主観にとどまらず、客観的なデータとして扱えば、それは十分に探究テーマとして成立します。
③ うまくいかなかった過去から、あらためて問いを立て直す
以前に途中でやめてしまった調査や、うまく進まなかったテーマがある場合、それを“やり直す”のではなく、“なぜ止まったのか”を掘り下げてみるのも手です。
たとえば、「問いが広すぎて対象が定まらなかった」「調べたいことが途中で変わってしまった」「役割分担が不明瞭だった」など。止まった理由を明らかにすると、次に取り組むテーマの条件や方向性が見えてきます。
未完の試みは、振り返りを重ねることで、むしろ深みのある新たな問いを生むことがあります。
夏休みだからこそ扱えるテーマ例
ここでは、実際に取り組みやすい具体例をいくつか紹介します。夏休み後半でも調査・観察が可能で、自分の足で確かめられるテーマに絞っています。
地域・社会をテーマにした問い
▪️商店街の利用時間と来客層の変化を調べる
時間帯別に観察を重ねると、客層の違いや利用目的の傾向が見えてきます。朝と夕方では訪れる人の年齢や行動が異なっているかもしれません。実際に店舗の方に話を聞くことで、背景にある要因が立体的に浮かび上がってきます。
▪️図書館の利用傾向とその理由を探る
曜日や時間帯によって、図書館の利用者層や目的が変わることがあります。「自由研究のため」「涼みに来ている」「静かな場所を求めている」など、実際の使われ方を記録することで、公共施設の役割や地域との関係が見えてきます。
自分自身をテーマにした問い
▪️集中できる環境条件を調査する
温度・明るさ・周囲の音など、作業場所によって集中のしやすさが変わる理由を調べていくテーマです。主観的な感覚だけでなく、記録をもとに傾向を分析することで、具体的な改善案や工夫につなげることができます。
▪️一日の気分の波と生活習慣の関係を記録する
起床時間、食事のタイミング、活動量などと気分の変化を結びつけて記録していくと、自分の生活パターンに見えていなかった法則が現れることがあります。「気分が落ちる時間帯にやるべき作業を避ける」といった実践にもつなげやすく、日々の行動に変化を起こすことも可能です。
今からでも「問い」は立てられる
探究とは、特別な準備が必要なものではありません。むしろ、自分が見たこと、感じたこと、気になったことを、丁寧にすくいあげていく過程そのものです。
「もう遅い」と感じるかもしれませんが、そう思った瞬間こそが問いの入口です。夏休みの後半だからこそ、落ち着いた目線で身の回りを観察できる余裕が生まれ、そして、自分自身の中から自然に生まれた問いであれば、最後まで探究を続けやすくなります。
まずは、自分の“気づき”を大切に拾いあげることから、探究の一歩が始めてみてください。
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